エゾアジサイ(蝦夷紫陽花、学名:Hydrangea serrata var. yesoensis)は、アジサイ科アジサイ属の落葉低木。別名では、ムツアジサイともよばれている。植物分類学では、ヤマアジサイの変種とされる。
分布と生育環境
日本の北海道、本州(京都府以北の日本海側の多雪地帯)、九州(北部と大隅半島)に分布し、深山の沢沿い、薄暗いやや湿った場所に自生する。庭や公園にも植栽されている。多雪地帯では冬場は雪に埋まり、見かける機会は少ない。
ただし、福井県以西のものはヤマアジサイの多雪適応型とする見解もある。また、南九州の一部に産する本種とされたものは、その後(2001年)別種(または亜種)のナンゴクヤマアジサイ (H.serrata var.australis) として記載された。
特徴
落葉広葉樹の低木で、高さは1 - 1.5メートル (m) くらいになる。日本海側の多雪地帯では、幹が積雪で倒されて横に伸びていることが多い。幹は灰褐色から茶褐色で、皮目は少ない。葉に葉柄があり、茎に対生し、葉身は大きく、長さ10 - 17センチメートル (cm) の楕円形で、葉縁には粗い鋸歯がある。
花期は6 - 8月で、青色、青淡色の小さな両性花のまわりに花弁4枚の装飾花をつける。装飾花も大きく、直径は3 - 4 cmほどあり、花色は青紫色や淡紅色、白色がある。両性花は結実して果実(蒴果)をつくる。果序は冬にも残り、花色の青味を帯びることがある。
冬芽は、枝先の頂芽は芽鱗がすぐに脱落してしまい裸芽となる。側芽は枝に対生する。冬芽のわきにある葉痕は三角形から腎形で、維管束痕が3個つく。
シノニム
- Hydrangea macrophylla (Thunb.) Ser. subsp. yesoensis (Koidz.) Kitam. (1974)
- Hydrangea belzonii Siebold et Zucc. (1839)
- Hortensia cuspidata (Thunb.) H.Ohba et S.Akiyama f. yesoensis (Koidz.) H.Ohba et S.Akiyama (2016)
- Hydrangea macrophylla (Thunb.) Ser. var. megacarpa Ohwi (1949)
- Hydrangea serrata (Thunb.) Ser. var. megacarpa (Ohwi) H.Ohba (1989)
- Hydrangea serrata (Thunb.) Ser. subsp. yesoensis (Koidz.) Kitam. (1951)
- Hydrangea macrophylla (Thunb.) Ser. var. acuminata (Siebold et Zucc.) Makino f. yesoensis (Koidz.) Ohwi (1953)
- Hydrangea macrophylla (Thunb.) Ser. var. megacarpa Ohwi f. stellifera (和名:ホシザキエゾアジサイ)
脚注
注釈
出典
参考文献
- 川島榮生『アジサイ百科―川島インデクス Hydrangea Kawashima Index』アボック社、2010年5月22日。ISBN 978-4-900358-67-6。
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、87頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、206頁。ISBN 4-522-21557-6。




